月惑星の縦孔探査
UZUME
Unprecedented Zipangu Underworld
of the Moon/Mars Exploration
月惑星の縦孔探査とは
月の表面は、たくさんの「穴」で覆われています。
月面に隕石が衝突したことでできたクレーターと呼ばれる穴があることはよく知られていますが、実は月にはクレーターとは違う「縦孔 たてあな」と呼ばれる、深い穴が発見されているのです。
月の縦孔
これまでの観測によって、月の表面には数多くの縦孔が発見されており、中でも特に巨大なものが以下に紹介する3つです。いずれも直径が数十メートルという巨大なものです。
これらの縦孔が「単なる穴」と決定的に異なる点は、縦孔の内部には横方向に空間が広がっているように見えることです。
賢者の海の縦孔
形がいびつな縦孔
位置 : 南緯35.6度 東経166.0度
サイズ : 直径約90m (長径118m 短径68m) 深さ48m
月の裏側にある賢者の海という盆地にあります
Date from LRO/ASU, Haruyama et ai., 2012
静の海の縦孔
月で最大級の縦孔
位置 : 北緯8.3度 東経33.2度
サイズ : 直径約100m 深さ約107m
アポロ11号が着陸した静かの海にあります
Date from LRO/ASU, Haruyama et al.(2012) in "Moon"(Springer)
マリウスヒルの縦孔
月で最初に発見された縦孔
位置 : 北緯14.2度 東経303.3度
サイズ : 直径約60m 深さ約50m
いくつもの火山が集まってできた場所にあります
Date from LRO/ASU, Haruya et al.(2012) in "Moon"(Springer)
縦孔から広がる
地下空洞
縦孔の内部には、横方向に空間が広がっているように見えます。どうしてそのような空間ができたのでしょう?最も有力な説として、縦孔の底の地下空洞は溶岩チューブによってできた空間だと考えられています。
ハワイにあるキラウェア火山の溶岩チューブとスカイライト
冷え固まった溶岩の内部に、溶けた溶岩が流れている
地面を流れた溶岩は次第に表面から冷えて固まっていきます。この時、内部の固まっていない溶岩が流れ切ってしまうと、周囲の固まった溶岩だけが残り中が空洞となることがあります。これが溶岩チューブです。
溶岩チューブには「スカイライト(天窓)」といって、天井が崩落して穴があくことがあります。月の縦孔も、溶岩チューブにあいたスカイライトではないかと考えられています。
月面活動拠点
月という天体は、科学的な探査の対象としてだけでなく、人類の居住空間を宇宙へ広げるための場所としても重要視されています。
ですが、昼夜の温度変化が大きく、放射線や隕石が降り注いでいる月に、人間が長期滞在するのは容易なことではありません。
もしも縦孔の奥に空洞が広がっているならば、、
そこは地表に比べて温度変化が小さく、また月面に降り注ぐ放射線や隕石を避けられることからも、居住基地として利用できる可能性があります。
私たちは、縦孔や地下空洞を調査することで、月の科学的な理解だけでなく、将来人類が月に進出した際 どのように月の空間を利用できるかについても検討していくことを目指しています。
連絡先
主責任者研究者 理学博士 春山 純一
国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構
宇宙科学研究所
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WEBSITE director 庄司大悟(JAXA/ISAS)